Webプロジェクトマネジメント標準

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Webでプロジェクトマネジメント分野とは!先を越された感を激しく感じつつ読了。

前半の林さんパートは分かりやすくてためになりました。後半はプロジェクトマネジャーとしてのあるべき論だったので、読むのがつらかったです。前半部分に関しては、既に私自身も実践していたり啓蒙している内容や、すぐにでも実践可能な内容が盛り沢山だったので、実用書としてかなり役立てさせてもらえると思いました。私自身、Webサイト構築プロジェクトは「携帯電話を作る」「六本木ヒルズを作る」といったプロジェクトと比べるとそんなに複雑ではなくむしろ簡単、抑えるべきポイントは限られているという事を常々いっていますので、本書の次の指摘にはいたく共感できます。

PMBOKには計44のプロセスがあります。しかし、そのすべてのプロセスを使わなければならない巨大プロジェクトは、ウェブ業界にはほとんどありません。

自分自身と自分の所属する組織のために特に必要だと思った事をメモしておきます。「コミュニケーションマネジメント」において、先方の業界や社風を知るという部分はその重要性を痛感しています。「メールのCC欄に誰が入っているかをチェックする」という指摘はごもっとも、いくらCCに入れても必ず自分個人だけに返信のあるお客さんもいらっしゃいますよね・・・。リスクの兆候をとらえて具体的な手を打つために、こういった点にも気を配りたいと思いました。また、コミュニケーションのためのツールについてはこれまた悩みが多く結論が出ていない問題のひとつです。オンライン共有ツール、ウェブ上のワークスペースの有効性に気づきつつも、具体的なツールを使うには至っていません。お客様向けのプロジェクトでは慎重に考えるべきだともいますが、社内向けの取り組みではもっと積極的にいろいろ試してみようと思いました。
「リスクマネジメント」において、リスク識別の具体的方法について参考になりました。WBS作成やスケジューリングと同様、関係者を集めてブレストすればいいんですね。
「プロジェクト品質マネジメント」において、品質と等級という考え方は新しい気づきでした。私自身、よく「バランス」「バランス感覚」という言葉を使いますが、品質と納期、費用のバランスを常に取り続けるためにこの「品質と等級」という言葉は分かりやすくてよいな、と思いました。
「プロジェクト・コスト・マネジメント」において、「超概算」「概算」「確定」という3つの見積もり段階はこれまた分かりやすくて、さっそく真似をはじめました。見積もりについても悩みは尽きません。営業さんだけで作った見積もり、受注してから見せられても困るなあ、とか。この作業項目抜けてるけど?いやもうこの金額で受注しちゃったんで、とか。外注費用、いざパートナーさんに見積もりをとったら、クライアントから受注した金額より高いんですけど、これどこから捻出るんですか?ディレクション費ですかそうですか、みたいな。
「変更管理」についても、なんかいい方法ないかなあ?と思いつつまだ自分の中で方法論を確立できていない部分です。プロジェクトにおいては「やり直し」が利益を食いつぶします。この「変更管理」に、当該プロジェクトが利益を出せるかどうかがかかっているので、早急になんとかします宣言。

本書の公式サポートサイトでは「プロジェクト体制図」「プロジェクトマネジメント計画書」「WBS&スケジュール」「課題管理表」の4テンプレートが無償ダウンロードできるようになっていますが、無償だけあって過度な期待は禁物です。

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林 千晶 (著), 高橋 宏祐 (著) 『Webプロジェクトマネジメント標準 PMBOK(R)でワンランク上のWebディレクションを目指す』(技術評論社、2008年)